君と僕明るめ短編

クッキー


甘い香りがして、目を覚ます。


「ん…」

すうっと目を開けると、ほのかに甘い匂い。

いつもはしばらく布団の中でごろごろして出るんだけど、その匂いの根源を確かめたくてすぐに布団から出た。

自分の部屋から出て、キッチンへ向かう。
甘い匂いはここからしていた。

ひょこっと覗いてみると、悠太がお菓子を作っていた。

「あ、祐希。おはよう」

にこっと笑いかけてくる。
俺も返事を返した。

お母さんのエプロンを着て、どうやらクッキーを焼いている模様。

「何でクッキーなんて焼いてるの?」

悠太の了承を得ず、もう作ってあるクッキーを食べようと手を伸ばしたら、パシッとはたかれた。
不満げな表情を見せると、

「だーめ。食べちゃ」

と言ってくる。

改めてそのクッキーを見ると、くまや犬や猫など色々な動物の顔が描かれたものだった。
さすが悠太は絵がうまい。
色も肌色やピンク、茶色、緑とちがっていて、ざっと見て5種類以上の味はありそうだった。
なかなか手の込んだものを作っている。

「っていうか祐希起きちゃったんだね」

今日は随分早いねと言う。
確かに今は午前9時。
休日の俺の起床時刻はかなり遅いから、それを考えると今日は幾分か早い。

「…ねえ悠太。このクッキー誰かにあげるもの?」

悠太が自分のために何かするというのはまずない。
手も込みすぎているし、だからそうかなって思った。

となると、相手は誰なんだろう?

「うん。祐希にね」

へえーそうなんだ。
ふーん、祐希か。
…………

「……………へ?ごめん、何て言った?」

「祐希にあげるつもりだったの、バレンタインに。でもばれちゃったからちがうの考えるよ」

これは春たちにあげよーと言う。

ぎゅー

「わー苦しいよー」

バレンタイン?俺のために?
あー駄目だ。
絶対に今顔赤い。
もう動物のクッキーとかかわいすぎ。
色もカラフルだし。
エプロンとか着ちゃってなにしてくれてるの。

「祐希、まだクッキー作ってるから。ね、離して」

「後5分」

「長いよ」

そういいつつ背中に手をまわしてくれる悠太大好き。

バレンタイン楽しみだなー。
俺ホワイトデー何返そう。


×
――――――
管理人の名前とこのタイトルの名前が同じなのは偶然です。これをアップしたときは違う名前でやってましたから(笑)

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