君と僕明るめ短編

長い黒髪も(祐要)

文化祭2日目。

「ラブイベントにオレたちを利用しようなどと片腹いたいわ!」

俺たちはお化け屋敷をやることになった。

「こちとら恋のキューピットじゃないからあくまでおばけだから」

先ほど来たカップルに対して文句を言っているこいつら。

「いやおばけならおどかせよ」

それが仕事だろうがという意味も含めて言う。
まあ鈍感なこいつらには伝わらないだろうが。

「と、オレ抜けるわ」

何の前触れもなく、いきなり子ザルがそんなことを言い出した。

「……………はあ!?おまっ…何言ってんだよ!!」

あまりにも突拍子もないことを言い出したから、かなり反応が遅れてしまった。

「いや〜トイレ行きたくなっちって」

んじゃ、と行ってさっていくバカ。

「あ、おい!テメッ…」

何も言う隙を与えず、我慢できないのか知らないが全速力で外へ向かっていく。
……って、あいつ入り口のほうに向かってったぞ。
客と鉢合わせしちまうだろうが。
どんだけ限界点近いんだよ。
つか、それ以前にトイレなら先に行っとけ!

「…千鶴行っちゃったね」

「本当にあのバカザルは」

「要、ご機嫌斜め?」

「そうだが?(いつもな)」

「オレはすごく機嫌が良いけどね」

「は?何で」

そう聞くと、祐希はオレのほうに近寄って来て、オレの髪(かつら)を触ってきた。
いつもとはちがうしぐさに、オレは思わず体がはねてしまった。

「だって…二人きりじゃん」

要髪長いね、と言ってもう片方の手はオレの頬をなでる。
髪つーか、かつらなんだが…。

「…おい、な、何触ってんだよ」

「んー?別に」

ぐっと祐希がオレに体重をかけてきて仰向けになる。
髪をなでる手はそのままに、もう片方はオレのわき腹をなでてきた。

「実をいうと、要の浴衣姿見た時から軽くオレの限界を超えてたからね」

「……お、おま…もしかして、ここで…?」

心臓がばくばくと鳴っているのがわかる。
じわりと冷や汗が背中ににじみ出てくる。

「千鶴が来るまで相手してよ」

そう言って浴衣をはごうとする…







「やめろおおお!!!!」



反射的にオレは祐希の顔面に拳を思いっきりぶつけてやった。


「……っ〜…」

鼻を押さえながらうめき声をもらす祐希。
構わずオレは起き上がって、祐希の体をぐいぐい押した。

「おら!どけよ重えんだよ!!」

「…要さん……何も顔面狙うことないじゃないですか」

「うるせえ!!こんなところでしようとするお前が悪い!!」



それから次の客がくるまで要の罵声は止むこともなく、祐希もおとなしくしていた。

おさまったかどうかは別として。


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