君と僕明るめ短編

精神交換



中学2年の冬。
毎年恒例の大掃除がやってきた。
悠太は要の家に用事があるそうで、今家にいない。
その間部屋の掃除をしててねと言っていたけれど、オレはマンガの仕分けで忙しかった。
残すマンガと捨てるマンガの仕分け。

「……ただいま…」

ほどなくして、悠太が家に帰ってきた。
何だかちょっと疲れてるみたい。
要の家で何かあったのかなと思っていると、部屋のドアが開いた。

「…………」

この部屋が全く片付いていないことに呆れたのか、しばらく悠太はぼうっと突っ立っていた。

「…ぁー、祐希、部屋、掃除してよ」

「してるしてる。今残すやつと捨てるやつの判別を」

「サボってるっていうんだよそういうのは」

ぺし、と軽くオレの頭を叩いた悠太。
オレはびっくりした。
悠太がオレを叩くなんてすっごく珍しいことだったから。

「…はいはいごめんごめん」

ちょっと悠太は機嫌が悪いみたい。
マンガの方は後回しにして、今は大人しく雑巾をやったほうがいいかな。
しぶしぶオレは雑巾を持って、バケツの水につけて絞る。
窓拭きでもやっとくかなあ…。

「水、垂れてる」

「えー、大丈夫だってこのぐらい」

「びしょびしょになんだろうが!!いいからさっさと絞れ!!」

べし、と持ってる雑巾で悠太はオレの頭を叩いた。
呆然と悠太を見つめると、悠太はオレの視線に気づかずに雑巾を絞って、窓を乱暴に拭き始めた。
悠太が、オレのこと本気で叩いた。
あんな乱暴は言葉を使って。

「…ゆう、た?」

「何?」

「あの、怒ってる?」

「は?あーそうだな。どっかの誰かさんがぐーたらぐーたらしてて、腹立つのなんのって」

ぐーたら?
腹立つ?

そんな、悠太…。

「……ぐす…」

オレは上着も着ずに部屋を飛び出した。





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